イタリアでの生活は日本ではあり得ないことが沢山ある。
街の公共施設の時計が狂いまくっていたり、テレビ番組の編集ミスでコマーシャル明けに全く違う回が放映されたり、電車が定刻に発車するのは奇跡のようだ。
バスの運転手さんは携帯でママや彼女と話しながら運転している。
イタリアで暮らし始めた頃は、平気だった一人での外出が、去年は突然できなくなった。
どれだけ正論を言っても、聞き入れてもらえるとは限らない。
我が家のベランダに投げ込まれるタバコの吸い殻。
上階の住民がそのまま下にポイ捨てする。
夫が上階の人に話しても「僕たちじゃない」という。
目撃したことを夫が言っても「それはあなたの見間違え、もう一つ上の階じゃない?」という。
その上は88歳のおばあちゃまだ。
ここは日本じゃないと諦めもつき、腹を括ると、色々なことがどうでもよくなった。
先月頃から少し調子が戻り、再び一人で街に出かけることができるようになった。
騒がしかったり、時間通りにいかない感覚、自分の都合でコロコロと状況が変わる人達と接しながら、これがイタリアだな。と思い出す。
先週、今週、役所に出向く用があり、一人で街に出た。
公証人事務所に到着し、オートロックを開けてもらう。
しかし、体重をかけて押しても、押しても扉が開かない。
3度、インターフォンを鳴らし、開けてもらった。
公証人事務所の事務員のため息が聞こえる。
「強く!強く!押して下さい!押すの!わかりますか?」
びくりともしない扉。
泣きそうになりながら、「押しているんですが...」と答える。
それ以降、インターフォンを押し、解除される音が聞こえるだけ。
誰も返答しなくなった。
7,8回目、3歩下がって弾みをつけ体当たりした。
開いた!
自分の力を振り絞って、体当たりしない限り、新しい人生の扉は開かないのかもしれない。
久しぶりの体当たり。成人して以来、初めてのことかもしれない。
イタリアの扉は重すぎる...
Grazie!!! Smile!!!